11/30・12/1・2 手漉き和紙絵巻『鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで〜』展開催

鳥獣戯画手漉き和紙ができるまで絵巻の表具

いつまでも長く保存性の高い絵巻にするための京表具

掛け軸など、作品の周りの縁に別の柄の紙に囲まれているのを見たことはあるのではないでしょうか。

洋画では額縁などがありますが、日本では紙や布を貼って仕立てる表具(表装)というものがあります。

主に、襖や掛け軸、衝立、額装、巻物など書画の保存や鑑賞のために行います。
表具は日本に仏教伝来とともに中国より伝わり、仏画を仕立てることが始まりでした。そののち、各地方へ仏教が普及し、茶道とともに発展をし、城下町の栄えた地域にて「京表具」、「江戸表具」、「金沢表具」、「伊勢表具」などと称するような作風が確立していきました。
この技能を持った職人を、表具師(ひょうぐし)または経師(きょうじ)と呼びます。

今回は、栂尾山高山寺に伝わる鳥獣戯画を題材にしていることから、「京表具」でも若手を育てている藤田月霞堂に表具を依頼しました。

「京表具」の特徴は、都として栄えた京都の長い歴史の中で成熟してきた上品な趣です。宮中をはじめ茶道の各家元や寺社など表具の需要が多く、上質な材料を調達できる環境にも恵まれています。京都は湿度が高く暑い夏、極寒の冬と寒暖差の激しい環境もあり、それに対応できる機能性や保存性にも優れていると言われています

手漉き和紙の風合いを活かした耳付き巻物

和紙を漉くと、縁に繊維が絡み合った毛先のようなものがもさもさっと残った状態になり、この箇所を耳と呼ばれています。

通常は、綺麗に裁断して整えるのですが、この和紙の耳があることで手漉き和紙ならではの繊維の絡みや風合いを感じることができ、他の素材にはない特徴になります。

今回制作する手漉き和紙絵巻「鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで〜」は、手漉き和紙の良さを語り継いで欲しいという願いから、和紙の耳を見せるカタチで仕立てています。

この仕立ては、額用の作品にはたまにあるようですが、巻子ではなかなか見られない仕立てとなります。

方法としては、二種類ありました。

1.裏打ちをしないで本紙のみつなぐ。
本紙(作品)への裏打ち(裏へ和紙を貼る作業)は行わず、その和紙のままで繋いでいく方法があります。
この場合、素の和紙のままなので強度や将来的な傷みには弱い状態のままとなります。
作業としては2〜3週間となります。

2.耳部分だけ裏打ちなしでつなぐ。
本紙(作品)への裏打ちを行いますが、耳部分のみ裏打ちが無い様、作品より少しだけ小さく裏打ちを行い、
お仕立てする方法となります。
一般的な方法ではなく、手間がかかり、耳部分のみ素の和紙のままになるので、その部分だけ強度が弱く、巻いた時に端が傷みやすいことがあります。
作業としては1〜1.5ヶ月となります。

今回選択したのは、2番の「耳部分だけ裏打ちなしでつなぐ」ものになります。

これにより、手漉き和紙の風合いと鳥獣戯画の動物と植物の自然感がより感じられる作品になります。

裏打ちに使用した和紙

今回の巻物は、本美濃紙、石州半紙、細川紙の3紙を使っており、ユネスコ登録されている技術で同じ要件で作られているものの、使用している楮や水の性質により僅かなちがいがあります。

今回表具をお願いした藤田月霞堂さんは各作品を少し丸めて手のひらで押さえて跳ね具合や繊維の流れを確かめられていました。

今回裏打ちに使用した和紙は、一枚目は美濃和紙、二枚目は三栖和紙、三枚目は宇田和紙になります。

裏打ちをすることで、湿度や乾燥などによる作品に曲がりや傾き、歪みなど変形を防ぐことができます。
どうしても紙の繊維に流れがあるため、そのままでは変形してしまいます。
その変形を防ぐため、作品の裏に繊維の流れを見ながらでんぷん糊で貼り付けていき、これを板に貼り付け時間をかけて乾燥させることでゆっくりと収縮し作品と馴染んでいきます。

今では人工乾燥でスピーディーに行うこともできるそうですが、保存性や変形に弱くなってしまいます。

今回の巻物制作に、2ヶ月半の期間を要し制作いただきました。

保存性を高めるには、定期的に広げて風通しをしてあげることが大事だそうです。

これから掛け軸を見るとき、曲がっているなとか傾いているなという視点でみてしまうかもしれませんね。

ピシッとまっすぐになっていましたら、良い表具師(ひょうぐし)または経師(きょうじ)さんだなと思ってください。

藤田月霞堂
〒602-8381
京都府京都市上京区今出川通七本松西入真盛町720
TEL:075-463-7818 FAX:075-463-7880
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