日本の和紙が世界に評される理由は、薄くて丈夫で長持ちといった点です。
この特性を引き出すのにトロロアオイという植物が重要な役割を果たしています。
このトロロアオイの根の部分をすりつぶすとネバネバな液が出てきます。
これを「ネリ」と呼びます。
繊維を絡みやすくする「ネリ」
和紙は楮、雁皮、三叉などの原料を舟と呼ばれる水槽に水とネリを拡散した状態にして、
簀(すのこ)ですくい上げ、乾燥させて作り上げていきます。
原料に水だけを拡散させた場合、簀から水が漏れるスピードが早いため万遍なく原材料を漉くことができません。
それに比べ、ネバネバなネリを水に混ぜることで、簀から水が漏れるスピードを遅くし簀の上に長く留ませることができます。
これにより万遍なく漉くことができるとともに繊維同士を絡ませることができます。
この繊維が絡むことで薄くても丈夫な紙ができるのです。
トロロアオイは食べれる花!?
トロロアオイの花はオクラの花にそっくりで、花オクラとも呼ばれたりします。
実は食用として、花弁を食べられるそうです。
いくらオクラに似ていてたとしても種の状態は、不味いそうです。
食べ方は、生でサラダにも使用できるほどで、天ぷらや湯がいて酢物にも合い、成分にはポルフェノールの一種であるフラボノイドが含まれるため、健康的にも良さそうです。
残念なのは、朝に咲いて夕方にしぼみ、夜になると地面に落ちるという一日花のため、市場にはほとんど流通しないそうです。
トロロアオイの栽培は危機的
トロロアオイは温帯であれば、どこでも育つ適応能力がある植物です。
ただ、乾燥には強いのですが、湿気が高すぎると病気を発生したりします。発芽適温が20~25度程度ですので、4月中旬~5月に播き、ネリにするための収穫は秋になります。
2019年、日本のトロロアオイ生産の7〜8割を占める茨城県小美玉市の農家が生産を辞めるというニュースが、全国の手漉き和紙生産者に衝撃が走りました。
多くの和紙生産者より辞めないで欲しいという声が届き継続することになりましたが、
茨城県小美玉市の農家は60代~70代後半ということでいつまで続けられるかわからない状況です。
栽培ができなければ和紙も作れないという状況ですが、農協等からも支援がないという状況だそうです。
どうにか栽培していける策を真剣に考えなければならない時期が来ているのかもしれません。