自社のコンセプトや商品、サービスなどを売り込む際、専門的な知識や知見をwebページや紙媒体に記載することがあり、参考資料となる画像や図表,文章などを引用したり転載したりすることがあるかと思います。
この場合、著作権には注意しなければなりません。
著作権は商標権とは違って、登録せずに発生する権利で、著作物の生みの親である著作者が有する人格的利益と財産的利益を保護する知的財産権の一種です。
いわゆる「無断転載」「コピペ」は著作者が有する著作権を侵害するおそれが高く、極めて危険な行為です。
考えなしに転載を行って著作権者とトラブルになった場合、著作者から差止請求や損害賠償請求を行われ、法的紛争に発展してしまうかもしれません。
無断転載による著作権侵害を認めて謝罪する程度のことで事態が収まればまだよいですが、いったんwebページや紙媒体に掲載してしまったものを取り下げて謝罪するとなると、事業者としての信頼が少なからず損なわれ、今後のビジネスに影響を及ぼすことは避けられないでしょう。
しばしば、著作権侵害を認めて企業やクリエイターが謝罪しているニュースを見ますが、決して他人事ではないのです。
著作権の対象となるものは、概ね以下のように分類されています。
- 言語の著作物 講演、論文、レポート、作文、小説、脚本、詩歌、俳句など
- 音楽の著作物 楽曲、楽曲を伴う歌詞など
- 舞踊、無言劇の著作物 日本舞踊、バレエ、ダンス、舞踏、パントマイムの振り付け
- 美術の著作物 絵画、版画、彫刻、マンガ、書、舞台装置など。
- 茶碗、壺、刀剣等の美術工芸品も含む。
- 建築の著作物 芸術的な建築物
- 地図、図形の著作物 地図、学術的な図面、図表、設計図、立体模型、地球儀など
- 映画の著作物 劇場用映画、アニメ、ビデオ、ゲームソフトの映像部分などの「録画されている動く影像」
- 写真の著作物 肖像写真、風景写真、記録写真など
- プログラムの著作物 コンピュータ・プログラム
以上の著作物を転載することは、著作権の侵害に繋がるリスクがあり、特に注意しなければなりません。
率直に言って、殆ど全ての創作物が該当するくらいの警戒心を持っておく方が良いでしょう。
ただし、著作物の全てを一切使用することができないわけではありません。
事業者が著作権を利用する最もポピュラーな方法が「引用」です。
第三者の著作物を「引用」することは、著作権を侵害しないとされています。
「引用」の枠内にとどまっていれば,事業者は他者の著作物を利用することができるのです。
この場合、著作権法によれば、「引用」は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない、とされています。
具体的には、(回りくどい説明になりますが、)既に公表されている著作物について、引用を行う必然性があり、カギ括弧などにより引用部分が明確になっていて、引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確にされていて、引用される分量が必要最小限度の範囲内に留められているなど、引用がその目的上正当な範囲内である必要があり、さらには、出所が明示されていることが必要とされます。
実際のところ、どこまでが例外的に許された引用で、どこからが著作権の侵害になるのか、判断に迷うことが多く、他社の著作物を利用したいなと思いついた際には、行政機関のQ&Aや相談窓口を活用しながら判断する方法が無難です(もう一歩先の探求)。
まずは、少なくとも、他人の著作物を転載することが重大なリスクを伴うことを正しく認識して、無断転載が許されている著作権フリーの著作物を利用する場合以外では、考えなしに無断転載を行うことのないよう、慎重な対応を心がけましょう。
もう一歩先の探求
著作権の侵害に当たるか否かの判断については、文化庁の以下のQ&Aに豊富な情報が掲載されていて、とても参考になります。
文化庁「著作権なるほど質問箱」
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/naruhodo/
同じく文化庁が公開している以下の資料には、著作権についての解説が、初学者にも分かりやすく、コンパクトにまとめられています。
文化庁「著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/92466701_01.pdf
弁護士 権藤理俊(ごんどう みちとし)
早稲田大学法科大学院卒。権藤法律事務所所属。不動産・建築・卸売・小売・通信・飲食・宿泊・フランチャイズ・サービス業等、複数事業者の法律顧問を務め、新規事業の立ち上げにかかるリスク評価や契約書作成業務に日常的に携わる。
権藤法律事務所
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