副業を開始するとなると、一番初めに直面するのが、オフィスをどうするかという問題です。
専用のオフィスを借りる場合、敷金、保証金、内装工事費などのイニシャルコストが生じますし、賃料、水道光熱費などのランニングコストも決して軽くありません。
そこで皆さん真っ先に思いつくのが、自宅を住居兼事務所にする方法です。
自宅を事務所にすれば、大きなコスト削減になり、むしろ、自宅の維持費の一部を事業上の経費に計上することもできるという大きなメリットがあります。
副業として事業を開始するのであれば、とても魅力的な方法ですね。
けれども、この場合、いくつか注意しなければならないことがあります。
現在の自宅が賃貸であれば、
・そもそも事業用に使用することが許されるのか
・使用細則などで禁止されている業種ではないか
などといったことを検討しなければなりません。
住居兼事務所として借りることを前提に新たに物件を探すことになりそうですね。
現在の自宅が持ち家であれば、
・マンションの場合、管理規約違反にならないか
・住宅ローンの約款で事業用途での使用が禁止されていないか
・確定申告時の住宅ローン控除の要件を外れてしまわないか
などといったことを検討しなければなりません。
住宅ローンの約款違反の件と住宅ローン控除の件は要注意です。
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住宅ローンは、居住用の建物を購入するための費用を金融機関が貸し付けるという前提で、政策的に極めて低利率の貸付が行われています。
住宅ローンの契約内容によっては、居住部分を改築して店舗にした場合、契約約款違反に該当して解約の対象になってしまうことが有ります。
実際には、改築の内容、事務所部分の範囲や使用方法などによって、住宅ローンの取り扱いはケースバイケースですが、見切り発車は非常に危険です。
副業を開始した結果、自宅を失いましたなんて、全く笑えません。
自宅兼事務所に改築する場合は、事前に金融機関の担当者に相談し、場合によっては、借り換えも視野に入れて慎重に検討しましょう。
持ち家に住んでいて住宅ローンを支払っている人であれば、多くの人が住宅ローン特別控除を活用しているだろうと思います。
現在の自宅を住居兼事務所に改築する場合、住宅ローン控除の処理が複雑になります。
まず、事業利用している部分が床面積の半分以上を超えると、住宅ローン控除の対象外になってしまいます。
そして、事業利用している部分を床面積の半分以下にしても、住宅ローン控除の対象は事業利用している部分以外の床面積に限定されます。
たとえば、事業利用の割合が30%の場合、住宅ローン控除は適用できますが、その対象が残りの70%に限定されます。
ただし、国税庁の通達上、事業利用の割合が約10%未満であれば、住宅ローン控除を100%適用できるとされていますから、これを用いて住宅ローン控除を全額適用して、事業利用している部分の諸費用を事業上の経費に計上する方法もあります(もう一歩先の探求)。
自宅兼事務所を開設することを検討されている方は、それが本当にお得かどうか、短絡的に判断せずに慎重に検討をして、専門家に相談しながら良い方法を探りましょう。
もう一歩先の探求
住居兼事務所で住宅ローン特別控除を全額適用するために事業利用の割合を「おおむね10%未満」にする必要がある根拠は以下のとおりです。とても複雑ですから、興味のある方は税理士に相談してみてください。
弁護士 権藤理俊(ごんどう みちとし)
早稲田大学法科大学院卒。権藤法律事務所所属。不動産・建築・卸売・小売・通信・飲食・宿泊・フランチャイズ・サービス業等、複数事業者の法律顧問を務め、新規事業の立ち上げにかかるリスク評価や契約書作成業務に日常的に携わる。
権藤法律事務所
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