12月2日『手漉き和紙絵巻「鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで」展 in 京都』閉幕
日本の手漉き和紙技術がユネスコ無形文化遺産登録から10周年を迎えるのを記念し『手漉き和紙絵巻『鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで〜』が、11月30日から12月2日の3日間開催された。今回の展示会会場は世界遺産・二条城で開催される『日本の手漉き和紙技術~ユネスコ無形文化遺産登録10周年記念事業』に合わせ、二条城近くの京都市上京区葭屋町通(よしやまちどおり)の町家となり、普段は学校法人 京都建築学園 京都建築専門学校の学生たちの学びの場として利用されており、大正元年に建築され、平成12年に改修された伝統的な京町家である。
鳥獣戯画の新しい絵巻となる手漉き和紙ができるまでをストーリー仕立てに11.5mとなる絵巻大作を展示。
本展で展示された手漉き和紙絵巻『鳥獣戯画~手漉き和紙ができるまで~』は、国宝『鳥獣人物戯画』が伝わる京都 栂尾(とがのお)山 高山寺より許諾をいただき、手漉き和紙の原料となる楮やトロロアオイの栽培から、紙漉きの工程、流通までのイメージをお馴染みの動物たちを模して描き絵巻にしたもの。
ユネスコ無形文化遺産に登録された細川紙(埼玉県小川町、東秩父村)、本美濃紙(岐阜県美濃市)、石州半紙(島根県浜田市)の三紙の手漉き和紙をつなぎ合わせた11mを超える巻物となっています。
2024年夏から筆入れが始まり、細川紙には和紙の原料も生産している埼玉県小川町ならではの楮とトロロアオイを生産する農家さんの姿が描かれ、石州半紙には生産したものを原料にする工程が描かれ、本美濃紙には手漉きをする最終工程から手漉き和紙が使用されるまでの流通が描かれたものになっています。
各手漉き和紙に描かれたものは、京都の藤田月霞堂により鳥獣戯画甲巻に近いカタチで2.5ヶ月にわたり表装が行われました。本絵巻は今までにない手漉き和紙ならではの紙枠に繊維が残る耳がある状態のまま絵巻にしており、手漉き和紙の特徴を感じ取るができる作品に仕立てられています。
本絵巻は鳥獣戯画が伝わる高山寺に奉納することとなっていることから、2024年11月26日に絵巻の仕立てが終わり、受けとった足で国宝鳥獣戯画を伝える高山寺に絵巻を運び入れ、国宝鳥獣戯画で割印として使われていた高山寺の朱文長方印のひとつを復元した印と、何十年も高山寺で使われている朱肉を使って、高山寺により巻物に印を押しています。
初日の開場から最終日まで人が途絶えることなく、会場周辺の方だけではなく東京や埼玉、名古屋、四国や中国エリアと広い範囲の方が来場されました。
来場者のなかには、絵巻に描かれたひとつひとつのシーンを別部屋で公開していた手漉き和紙の工程がわかる映像やポスターと見比べながら鑑賞されたり、動物たちの表情や遊び心ある仕草などを見て笑いがこぼれ、どのシーンが良いか比べて見て来場者同士で談笑している姿も多く見受けられました。
手漉き和紙の今後の可能性を感じる作品
会場1階では絵巻のほかに、手漉き和紙のこれからの可能性を感じることができる和紙作品が展示された。展示品の中には、手漉き和紙をよって作られた椅子があり、恐る恐る座ってみる方もいたが、和紙の丈夫さに驚かされていた。ほかには、手漉き和紙の原料となる楮の和紙には使われない茎の芯棒を再利用したアートチョークや、大島紬の織り上げる前の糸を混ぜ込んだ暖簾、泥染め和紙、ユネスコ登録3紙を使用した包装などが展示された。
販売物では、手漉きをしている蛙兎猫を3Dで表現したフィギュアも発表され、絵とはまた違った可愛らしさに写真におさめられたり、プレゼントや部屋に飾るように購入する方も。
鑑賞から参加へ 手漉き和紙の和が広がる展示会に
さらに今回は、会場入口に、生産不足となっている手漉き和紙の原料トロロアオイを実際に触ることができるコーナーが設けられ、トロロアオイを家庭で育ててみたい、もっと詳しく調べてみたいという話も聞くことができた。来場者の中には絵巻の制作者と和紙や鳥獣戯画への思いを語り合う場面もあり、本展示会の今後の可能性を広げる機会にもなったほか、手漉き和紙への興味がいっそう広まったことを印象付けた。
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