11/30・12/1・2 手漉き和紙絵巻『鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで〜』展開催

【町弁の企画屋法律相談所】契約書を書類として残しておかないと

新型コロナの感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令され、経済状況が一変しました。

弁護士である私のところには、この機会にビジネスモデルを転換したいので新たな契約書類の作成を検討したいという種類の相談を多くいただいています。

そんな近況を踏まえて、今回は、「なぜ契約書を作成しなければならないのか」ということを説明したいと思います。

まず、よくある誤解を解消しておきたいと思います。

「契約書を作成しなければ契約は法的に成立しない」という理解は、間違っています。

民法上、契約は当事者の意思の合致により成立するとされていて、契約が成立するために契約書を作成することは必要とされていません。
契約は口約束だけでも法律上有効に成立するのです。
これを法律用語では「意思主義」といいます。

(なお、もちろん例外はあり、たとえば保証契約は書面によらなければ有効に成立しないと民法に定められています。このような特殊な契約類型を要式契約といいます。)

それでは、なぜ、わざわざ、契約書を作成しなければならないのでしょうか。

 

弁護士 権藤理俊(ごんどう みちとし)

早稲田大学法科大学院卒。権藤法律事務所所属。不動産・建築・卸売・小売・通信・飲食・宿泊・フランチャイズ・サービス業等、複数事業者の法律顧問を務め、新規事業の立ち上げにかかるリスク評価や契約書作成業務に日常的に携わる。

 

権藤法律事務所
〒160-0017 東京都新宿区左門町13-1 四谷弁護士ビル305
TEL:03-3357-1385 FAX:03-3357-2055
MAIL:michitoshi@gondoh.gr.jp
HP: http://www.gondoh-law.com/

 

[read_control]

 

私が考えるに、その理由は、以下のとおりです。

まず、取引を開始する際、口頭では詰め切れない契約内容を確認するために、契約書を作成する必要があることが多くあるからです。
次に、取引に関与する当事者が、自分に有利な内容の契約書を設けて、自分の経済的利益を守りたいという必要があるからです。
最後に、万一信頼関係が失われて紛争に発展してしまった場合、紛争を解決するための証拠となる契約書を用意しておく必要があるからです。

取引には膨大な種類がありますが、契約書が全く必要ないものはほとんどないでしょう。
馴れ合いに身を任せて契約書を作成せずに事業を行っていると、自分が受けた仕事の内容や範囲が明確でなくなって、自分の経済的利益を失い、紛争化した際には請求の根拠になる証拠すらないという厳しい事態に直面することになります。
もしあなたが、契約書なしに仕事を進めているとしたら、このような重大なリスクに身を晒しているということを十分認識してください。
喩えるなら、ノーヘル、Tシャツ、短パン、サンダルで、大型バイクを飛ばしているようなものでしょうか。

簡単にまとめますと、契約書を作らなければならない理由は、自分の事業を円滑に進めて経済的利益を守り、紛争を予防するとともに、紛争が発生した場合に備える必要があるから、というところです。
だからこそ、弁護士によるリーガルチェックという業務が、古今東西問わず、事業者からの根強い需要に支えられているのだと思います。

ちなみに、契約書がこれほど重要なものだということを踏まえて、わが国の法律は、多くの契約類型において、「契約書を作成しなければならない」という法的義務を定めています(もう一歩先の探求)。
「契約書を作成しなければならない」といっても、これに反して契約書を作成しなくても、契約自体は有効に成立します。
しかし、「契約書を作成しなければならない」義務に違反したことが明るみに出ると、罰則や行政処分を下されるなどして事業の継続が困難になりますから、事業者としてはしっかりフォローしなければなりません。

次回は、今回のもう一歩先、「契約書を作成するときに何を注意しなければならないのか」について説明したいと思います。

もう一歩先の探求
法律で契約書を作成する義務が定められているもののうち、フリーランスや副業に関わりそうなものを絞ってリストアップしてみました。これはあくまでも参考として、ご自分の関わる事業を規制する法律はこの機会にしっかり確認してみてください。
・業務委託契約書(製造・修理・情報成果物作成・役務提供委託)
・割賦販売契約書及びローン提携販売契約書
・建築請負契約書及び設計監理委託契約書
・不動産投資顧問契約書及び金融投資顧問契約書
・定期建物賃貸借契約書
・労働契約における労働条件通知書ほか

 

弁護士 権藤理俊(ごんどう みちとし)

早稲田大学法科大学院卒。権藤法律事務所所属。不動産・建築・卸売・小売・通信・飲食・宿泊・フランチャイズ・サービス業等、複数事業者の法律顧問を務め、新規事業の立ち上げにかかるリスク評価や契約書作成業務に日常的に携わる。

 

権藤法律事務所
〒160-0017 東京都新宿区左門町13-1 四谷弁護士ビル305
TEL:03-3357-1385 FAX:03-3357-2055
MAIL:michitoshi@gondoh.gr.jp
HP: http://www.gondoh-law.com/

 

error: Content is protected !!