11/30・12/1・2 手漉き和紙絵巻『鳥獣戯画〜手漉き和紙ができるまで〜』展開催

世界が驚く日本人の自然観 同化感覚

世界の人は、日本の自然と文化を感じたい

富裕層向け米国旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」の読者投票「ワールドベストアワード2020」において、東京、京都の2都市が入りました。
日本は世界の旅行客から関心の高い国です。

日本に滞在した訪日観光者を対象にしたアンケートによると、日本に興味のある点として「ゲームやアニメ」「日本食」「伝統文化や自然風景」が主にあげられています。

また、各エリアごとの滞在して魅力を感じた点の特徴としては、アジアからの観光者においては「四季を楽しめる」、欧州からの観光者は「伝統と現代が上手く融合されている」という結果が出ており、日本の自然や伝統文化に関心が高いことがわかります。

 

自然と共生してきた日本

日本は島国でもあり、山国です。

自然環境は台風、地震、火山、豪雨、豪雪、暴風と厳しい面もある一方で、四季があることで山海の幸に富んでいます。

また、日本人は古くから農耕民族でした。

畑の実りは自然の影響をもっとも受けます。

大陸では食料確保のために戦が起きるのは当たり前でした。

日本は島国であったこともあり、干ばつなどにより食料が確保できない場合にすぐに他国から入れることはできませんでした。

収穫できることはありがたいことであり、自然は貴重なものだという感謝の気持ちが生まれたのも環境や食文化からかもしれません。

日本人の自然への敬意や感謝といった、欧州とは異なり自然を脅威として恐れるのではなく、受け入れながら自然と付き合っていく共生する価値観が生まれました。

 

日本人独特の自然観 同化感覚

日本の四季や豊かな自然との共生のなかで、自然から食べ物だけではなく道具などの恵みをえる代わりに、祭りなどの催事をおこなう関係を構築していきます。

人が接するものすべてに対して感謝や敬意といった内からの思いが神として崇めたのが八百万の神です。

八百万の神は自然界のすべてを畏れ敬う気持ちがベースとなっている神道の考えで、木、山、川、火、水、岩などはもちろんのこと、人が作ったもの、そして米粒一粒までといったあらゆるものに神様が宿ると考えています。

日本人は自然を畏れ敵対し克服するような考えをもつのではなく、自然を暮らしのなかに取り込み、精神面からも関係をもち自然と同化していくことで感性を育んでいきました。

 

同化感覚から生まれた文化

同化とは、異なる性質・態度・思想などが、感化されて同じになること、自分のものにすることをいいます。

日本人は自然と共生し、同化することで色々な文化を生み出していきます。

特定のカタチを留めず無限の表現力をもつ自然。

とくに日本は四季があり、同じ木でも、空でも様々な顔を見せます。

この自然を内にとりこみ自身の感性が育まれ、染め物などの色彩感覚や繊細な言語表現からの文学、自然の恵みからカタチにする工芸、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食へとつながっていきます。

 

日本語特有の形容詞の表現力

日本語の美意識を英語で直接的に表現することはほぼできません。

それは日本特有の美意識が言語化されたものだからです。

古典文学のなかでそのような言葉が数々生まれました。

とくにあらわれてきたのが、枕草子や源氏物語ではないでしょうか。

その代表的な言葉であり美的理念にもなったのが、「をかし」「もののあはれ」があります。

記事:美的理念になった言葉「をかし」「もののあはれ」

 

自然と同調し、内なる感性を磨き上げる伝統工芸

自然の恵みを日常品など道具にしていった伝統工芸。

紙をつくる手漉き和紙では、漉いてる際には水と同調し、内なる感覚を研ぎ澄ませることで良い紙ができます。

また、かわりゆく自然環境によりそって、時代とともに変化してきたのも伝統工芸です。

感性を磨き上げることが、終わりなき旅である日本固有の考え方「道」につながっていきます。

記事:使う人の感性を磨く日本人としての道具

 

対峙して自身の感性を大事に育む

日本人は自然とともに共生することで、同化感覚が生まれ、自然を自身に取り込むことで感性を磨き上げてきました。

この受け入れる姿勢が、人に対してもあらわれたのが「おもてなし」です。

ある茶菓子屋さんでは、まず和歌を書き、キーワードをスケッチしてからお菓子を作るという話を聞いたことがあります。

自然をまず見て、自分のなかで生まれた感性を大事にしカタチにする。

便利な世の中になり、時短など言われていますが、一呼吸おいて自然と対峙してみてはいかがでしょうか。

何か自身に新たな感性が生まれてくるかもしれません。

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