2021年10月30,31日に、裏参道ガーデンにて「kazaana2021」展が開催されました。
本展示会では、伝統工芸とアーティストのコラボレーション作品の展示のほか、和紙の泥染め体験や大島紬の織り機の実演など、鑑賞にとどまらず伝統工芸のこれからの可能性を体感できる内容となっていました。
来場者は、今回の展示作品の題材となっていた和紙や大島紬といった伝統工芸に興味のある方から、アート作品を創作したアーティストのファンをはじめ、裏参道で作品を色々と見て歩いているアートやデザインに興味のある方が来場されました。
ペン作家川口氏、水上製本所水上氏によるパネルトークでキックオフ
展示会のオープンとともに開催されたのが、「わしのねり寄合 プロジェクトメンバーが語る和紙の魅力」と題したライブ配信講演。
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パネラーには、市松罫の和紙を使ってアート作品を創作したペン作家の川口氏と、御朱印帖や和製本を専門とした水上製本所の水上氏を招いて、和紙の魅力について語り合われました。
内容は、和紙の原料を育てるわしのねりプロジェクトの進捗状況の報告からはじまり、和紙の魅力へと話が進められ、今回創作にあたった川口氏は和紙に書くのは初めてであったが、書きごたえがあり、音も感じれるのがきもちいいと話し、今だからこそ五感を刺激する和紙の魅力は大きいと語り合われていました。
パネルトークの様子は、下記YOUTUBEで配信されています。
※会場の関係で音質音量が低くなっています。音量は大きめでご視聴ください。
アーティストと伝統工芸である和紙、大島紬とのコラボレーション作品展示
市松罫の和紙を使用して創作されたのは、ペン作家である川口氏、日本画家である丁子紅子さん。
来場者の方や両作家のファンの方から「下地が変わるだけで印象が大きく異なってくる面白い」と作品を前に長い時間眺められていました。
市松罫の和紙は、描いたものを浮き立たせる効果のほか、川口氏が「アナログなのにどこかデジタルを感じる見た目になるのが驚き」という感想もあがっていました。
市松罫の和紙作品「KING」の詳細・創作映像はこちら。
市松罫の和紙作品「朱光華。」の詳細・創作映像はこちら。
また、本場奄美大島紬×Artの作品は日本のみならずグローバルにアーティストが参画し、「踊る」「居座る」「包む」「交わる」「隠す」といった、今までの大島紬にはない切り口で大島紬を表現した作品になっていました。
本場奄美大島紬×Artは、企画屋かざあなと本場奄美大島紬NEXTプロジェクトで進めているプロジェクトで、2020年からはじまり、若い職人で作り上げた反物を使って作品を作り上げるものになっています。
今回は、5作品が展示され、作品のインスピレーションから商品開発までに至った「大島紐」は、特別に靴紐として展示を行い、来場者からは好評で近々に販売を開始することとなるそうです。
本場奄美大島紬×Artのアーティストとともに会場からライブ配信が行われ、作品を創作しようと思った経緯や、作品への想いが語られました。
ライブ配信の様子は、下記YOUTUBEで配信されています。
和紙と大島紬のコラボレーション「和紙泥染めアートボードワークショップ」
今回の展示会では、和紙と大島紬のコラボレーション企画として、和紙泥染めアートボードワークショップが開催されました。
和紙を泥染することで、自然素材と自然の染色といったナチュラルな作品になり、個々に異なる風合いに参加者はどういうものができあがるのかワクワクしながら楽しんでいました。
アーティストが使用した市松罫の和紙ノートの試し書き
ペン画家川口氏と日本画家丁子氏が描くのに使用した市松罫の和紙に、試し書きができるコーナーが設置されていました。
市松罫の和紙ノートは、クリエイティブな方に使って欲しいという想いから作られたそうで、来場者は自身が描いた字や絵が綺麗に浮き上がる様に、アーティストの創作時の心境を感じることができたようです。
今回は序章。これからどこへ進むのか。
本場奄美大島紬×Artはフランスでの展示会を目標に進められてきましたが、新型コロナウイルスの影響により、渡欧が難しいことから日本での開催になったそうです。
海外に向けての展開もありますが、海外なのか日本なのかどこで定着させるか、嗜好品から脱却するのか、芸術品として極めるのかなど課題の多い伝統工芸。
アナログを追求したような伝統工芸は、リアルで体感するのが心により響くものですが、本展示会が今後どのような展開になっていくのかが楽しみです。
今後の取り組みに注目してみましょう。
kazaana2021展来場ライター