TBS系列のドラマ「天国と地獄-サイコな2人-」でとりあげられ、話題となった奄美大島に古くから伝わる有名な昔話「月と太陽」。
この昔話は、奄美群島の最も北東部にある島喜界島に伝わってきたもので、三省堂から1974年に出版された日本昔話記録12鹿児島県喜界島昔話集に記されています。
この本に記されている昔話の数は107話もあり、その地域だけで数多く残されているのはとても珍しいことです。
もともとは、昭和8年から昭和9年にかけて刊行された雑誌「島」の第一巻から「喜界島昔話」として連載され、昭和10年に創刊した雑誌「昔話研究」でも連載され、昭和9年に刊行した雑誌「旅と伝説」の特集にもなり、それらの殆どを一冊にまとめた全国昔話記録が昭和18年に刊行されました。
喜界島の昔話は、南島文化として宮古島の旧伝などとも比較され、ニライカナイの信仰を研究するのにも大変貴重となっているそうです。
昔話特有のリズミカルな美しさをもち、海幸山幸系統の昔話として、例がないものとされています。
奄美大島は世界自然遺産にも登録され、国内最大規模の亜熱帯照葉樹の森として多くの固有種を育んできました。
世界でも唯一の独特の環境で、自然と密接な関係で暮らしていたからこそ、多種多様な昔話が生まれたのかもしれません。
「月と太陽」
昼の太陽は、本当は夜の月であるべきで、夜の月は昼の太陽であるべきだった。というのは、有ったる夜(或る夜)二人寝ていて、今夜誰かの腹の上にシヤカナローの花が咲いたら、咲いた者が昼の太陽になり、咲かなかった者は夜の月になる事にしようと約定した。処がシヤカナローは月の腹に咲いた。
それを見た太陽は、自分が昼の太陽になりたいものだから、こっそり自分の腹に植え替えてしまった。
だから太陽は昼に、月は夜に出る事になったのである。それで太陽はあらぬ事をしたからまともに見られないが、月はいくらでもまともに見られるという事である。
<日本昔話記録12 鹿児島県喜界島昔話集より>
今では、図書館もしくは古本屋でしかみつけることができない日本昔話記録ですが、お出かけ前に読んでからいくと、また見え方も違ってくるかもしれません。