農家が5年前から22.5%減少
2020年11月に農水省から衝撃的な発表がありました。
2020年農林業センサス(2月1日現在)の調査結果によると、主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」は136万1000人と、5年前の前回調査から39万6000人(22・5%)減少した結果が出たとのこと。
基幹的農業従事者は一貫して減り続けており、減少ペースも加速しています。
この要因の一つに高齢化があげられており、20年の基幹的農業従事者の平均年齢は67・8歳。65歳以上の割合は4・9ポイント増の69・8%に達しました。
「70歳を超えると、離農するか、統計対象とならない規模に経営を縮小する傾向にある」(センサス統計室)という状況だそうです。
<発表の詳細はこちら(農林水産省2020年農林業センサス結果)>
和紙の原料「こうぞ」「みつまた」「とろろあおい」の生産量減少
和紙の原料は「こうぞ」「みつまた」「がんぴ」と「とろろあおい」があります。
この原料に関しても農家減少と同じく生産量が減少しています。
公益財団法人日本特産農産物協会から令和2年3月に、地域特産作物(工芸作物、薬用作物及び和紙原料等)に関する資料により各特産作物の生産量について発表がありました。
各生産量は20年前から、「こうぞ」は75%減少し、「みつまた」は93%減少、「とろろあおい」は78%減少しています。
原料は植物であることにより天気などの影響も大きく受け、2015年に「みつまた」は1年前から85%減少しました。また、「とろろあおい」はこの5年で32%減少しています。
手漉き和紙に絶対必要な「とろろあおい」産地の現状
薄くて丈夫で保存性が高いことで世界的に知られている日本の和紙ですが、この薄くて丈夫な和紙を作るには、原料となる『ねり(トロロアオイ)』が必要不可欠です。
手漉き和紙は、水のなかに楮などの植物の繊維を拡散させ、竹などを編んだ簀のある漉桁で漉くことで繊維同士を絡ませて紙にしていくのですが、水よりも重い繊維は、水中で拡散させてもすぐに沈殿してしまいます。
そこでねりを使うことで水中で繊維をコーティングし、均等に分散して浮遊させ漉きやすくします。
また、水だけだと簀から水が抜ける速度が早すぎるため、ねりの助けによって簀の上に原料液を長く留めて漉桁を揺することで、繊維をより一層絡ませることができ、世界でも評価される薄く強い紙ができあがるのです。
<記事「> 」
この「とろろあおい」ですが、2019年に国内でトップ生産量をもつ茨城県の小美玉市の5戸が高齢化から生産を中止するというニュースがながれ、和紙業界に衝撃を与えました。
茨城県小美玉市では5件でしか生産をしてないにも関わらず、収穫面積あたりの生産量が高く全国の約5割の生産量があります。
需要があるのに、生産が足りない
全国で2番目の生産量をもつ埼玉県小川町では、この茨城県小美玉市の生産中止のニュース(現在生産継続する意向)により全国の和紙生産地から多くの問い合わせがあったとのことです。
小川町には、とろろあおいの生産者の高齢化は進んでいるものの13件の生産者がいますが、茨城県小美玉市ほど面積あたりの生産量が出せていません。
昨年も全国からの注文に対して、応えられなかったと農家さんは語っていました。
和紙の生産需要があるなかで原料が不足しているというのは、大きな機会損失につながってしまいます。
農家が減少しているなかで、どの農作物においても危機的状況ですが、生産方法や新たにはじめる農家の育成を一刻も早く考えなければならない時期に来ています。